2019/02/14

太鼓と私 -「あの感覚」

ここ1年くらい、太鼓の練習をしています。



シンガポールの太鼓団体に所属していますので、太鼓に触れる機会は比較的たくさんあります。



とはいえ、きちんと太鼓と向き合って練習するのは月1回ほど。



打楽器は不得手でして、一向に上達しません。



自分が納得できる「音」を、太鼓ではまだ一打も打てておらず、



ずっと光の見えない暗闇を走っているような気がします。



それでも、太鼓の練習を止めないのは、太鼓が篠笛にとって切っても切れない関係にある楽器だからです。



今日は太鼓についてちょっと書いてみます。


太鼓がうるさくて嫌だった時期


実は篠笛を始めた当初、太鼓団体のメンバーが叩く太鼓の音がうるさくて耳障りで仕方ありませんでした。



篠笛一人(私)に対して、10人以上が長胴でマックスの音量でドカドカ叩き出す。



その中で吹く。



笛を始めたばかりで、芯のある大きな音を鳴らすことができなかった私は、その大騒音(失礼)の中で笛を吹くことにかなりストレスを感じていました。



誰一人、自分の笛の音を聴いていないんじゃないか(実際、最初の方は笛を鳴らせてなかったから聴こえてなかったと思います)、という被害妄想と孤独感が入り混じった感情を抱きながら一緒に練習をしていました。



でも、ここ2年くらいでしょうか、自分の太鼓に対する向き合い方が変わりました。



もっと相手の音を聴こう、太鼓の音を通して伝わってくるメンバーからのメッセージに耳を傾けよう。


そう思うようになりました。


太鼓の向こう側にいるメンバーと向き合う


太鼓メンバーには、クラスで太鼓を習い始めた初心者からパフォーマンスで演奏しているメンバーまで様々な人がいます。



経験、技術、年齢、性別、性格、国籍バラバラです。


同じ曲を練習していても、打つ人によって聴こえてくる太鼓の音は全く違います。



一人一人の音に向き合うようになると、それらの違った音に反応して、自分の笛の音や息遣いも微妙に変化していることに気が付きました。



予想もしなかった良い一打がぶちこまれると、私も予想しなかった一音を鳴らしたりするのです。



逆に、何のメッセージもない平坦な太鼓を叩かれると、自分でもびっくりするくらい「カラッポ」な笛の音になったり(笑)
(これはダメなの分かってるんですけど、時々やってしまう...)



まだリズムがうまくとれない初心者の太鼓には、息継ぎやアクセントになる部分を少し大げさに吹いてあげることで拍を取りやすくしたり。



演奏をしている、というより笛と太鼓を通して相手と会話しているような感覚です。



基本となるお題(曲)はあるけれど、どう流れていくかは、互いの性格、関係性、相性、その時のコンディションに多分に左右されます。



同じ相手でも毎回違う流れになるのが面白い。



太鼓と演奏するのって、しゃべってるのと一緒やんって思うようになってから、太鼓の音をうるさいとは感じなくなりました。



それどころか、篠笛と一番親和性が高いのって、やっぱ太鼓じゃない?と思うようになり、昨年一年間は太鼓と一緒に笛を吹く時間を多く作るようにしました。



太鼓の練習を始める


同時に、冒頭の通り、月1ですが太鼓の練習もするようになりました。



昨年、水口囃舎さんから教えて頂いた水口囃子の小太鼓(締太鼓)の練習をしています。



恥ずかしながら、未だ地打ちすらまともに出来ません。



打楽器を奏じるセンスがまるでないので悪戦苦闘しています。



鼓面の上っ面を叩いているだけで、全く太鼓の芯(?)、太鼓の中まで打ち込めてないのが分かります。



撥と鼓面の角度が違うのかな、撥の持ち方を間違えてるのかな、腕の下ろし方がカタいのかな、と色々フォームを変えたりするのですが、鈍臭い音しか太鼓から返って来ずなかなかうまいこといきません。いい太鼓を使わせてもらっているのに申し訳ないです。



苦行です。一番苦手なことをやっています。アイロンがけ(私が世界一嫌いな家事)といい勝負なくらい苦手です。



でも太鼓打ちの気持ちが分からずして良い笛吹きにはなれないと思うので続けています。





「あの感覚」


私が初めて笛を「鳴らした」時、自分の持ってる笛が突如ぶわーーんと振動し出しました。


歌口に唇をつけて、指で笛を持っていますから、笛の振動が身体中に伝わります。


耳から聴こえてくる自分の笛の音はそれまで聴いたことのない、芯のある真っ直ぐ遠くに響く音。


自分の周りの空気は笛の振動が伝わって揺れているのが分かる。


初めて味わった感覚だったので、「えっ、なにこれ?!」とパニックを起こしたのを覚えています。


ようやく落ち着いて、これが笛を「鳴らす」ということなんだと理解した時、それまでの自分はずっと笛を吹いていたに過ぎなかったのだと分かりました。



おそらく、太鼓を「打つ」というのも、楽器は違えど原理は一緒なんじゃないかなと思います。多分、太鼓を打った時は、否応なしに身体で耳で、周りの空気の揺れで感じれるんだろうな、と。



だとしたらやはり今の私は太鼓の面を叩いているに過ぎません。



笛を鳴らした時に味わった「あの感覚」は太鼓ではまだ体験していません。



一打でもいいから、太鼓を「打つ」感覚を身体で感じてみたいものです。



道のりはかなり遠そうですけど...





太鼓の練習と、太鼓との練習(笛x太鼓)は並行してこれからもやっていくつもりです。





以上 太鼓の話でした。






これは民謡を演奏する時の太鼓のセットアップ
左が水口囃子の練習の時に使っている小太鼓(締太鼓)です。



0 件のコメント:

コメントを投稿