2019/04/29

5分間だけドレミを忘れましょう

こんにちは。久しぶりに人前に出て色々やってきたので活動報告をします。

篠笛について英語でスピーチ


ここ1~2週間の間で、篠笛について英語でお話する機会が2回ありました。


いずれも5分間の中で篠笛のお話と演奏をする内容でして、聞き手は西洋音楽分野に関わっている、篠笛のことを全く知らない外国の方たちです。



篠笛に関する知識は数年前と比べたらかなり増えましたし、今の私は自分の意見・主張を明確に持っていますので皆さんにお伝えしたいことはてんこ盛りにあります。


ですが、聞き手が篠笛のことを全く知らない外国人である、英語で話さなければならない、時間の制約がある、アウェイ状態である(笑)、といった条件がありましたので、これまで得た膨大な知識・情報の大半を一旦削ぎ落として本当に伝えたいことだけを抽出してスピーチに臨む必要がありました。

考えてみてください、知らない楽器を持った日本人が突然現れて、さして流暢でもない英語でそのよく分からない楽器の難しい話を延々とし出したら。

話全然入ってきませんよね。
それにちょっと怖いです(笑)


と、いうわけで大事なところだけシンプルに、わかりやすく伝えて、皆さんに篠笛という楽器のことを覚えて帰ってもらうべく、次のテーマでお話してきました。


「5分間だけドレミを忘れましょう」



大まかな流れは以下です。

①篠笛の簡単な説明
             ↓
②音律の話 (日本十二律と西洋12平均律)
             ↓
③5分間だけドレミを忘れて日本の音に触れてください
             ↓
④演奏(がっつり日本の音曲)


英語での話術が未熟なので、まだまだ改善点はあるものの、話のテーマ自体の食いつきは意外にも良かったです。

②の音律の話は、うんうんと頷かれてる人も結構いらっしゃいました。
難しく話そうと思えばいくらでも難しく話せる題材ですから、初めてこういう話を聞く人にも分かりやすく伝えるために一番工夫した箇所ではありました。

音律の説明のあと、このような話をしました。(以下私が話した英語を日本語に翻訳したものです)

時々、ピッチにこだわる方々が親切にもこのようなご忠言をくださることがあるんです。
「君の笛のピッチは外れているね」   (会場 笑い声)
このご忠言は正しくもあり、同時に間違ってもいます。
彼らが西洋音律を基準にして私の篠笛のピッチについて話しているのなら、「外れている」と言えるのかも知れません。しかし、そもそも篠笛は日本の音律で調律された日本の楽器です。日本の音律を基準にした時、私の篠笛のピッチは「外れていない」のです。

西洋音楽に関わっている人たちの前でこんなことを話して総スカンを食らわないかしらと内心ヒヤヒヤしましたが、これを話した時の会場の反応が一番大きかったです。
「めっちゃわかる」と言いたげに大きく頷いている方がいらしたのが印象的でした。


短くシンプルながらもきちんと篠笛のこと、音律のことを伝えられたので、
③→④の流れはとてもスムーズでした。


人前で英語で話すことに緊張し過ぎて、逆にその後の演奏になるとホッとしたのか、両日ともキレイな音が出て、指も滑らかに動きました。
よし、これからは演奏前必ず英語で話をしよう(笑)


スピーチ・演奏終了後、「今日初めてあなたの楽器を知ったが音がとても良かった」と声をかけてくださった方がいらしてとても嬉しかったです。
お話だけではなく、篠笛の音色の良さもちゃんと伝わっていたようで安心(*˘︶˘*)

良い経験となりました。


以下、出演したイベントの写真。
1つ目のイベントは写真がないので、2つ目のイベントのみ。



最近、篠笛について英語でお話する機会がありました。篠笛を、「伝統」"tradition" / "traditional" という言葉を一言も用いずに説明できたことは私にとっては大きな自身につながる出来事でした。【ある篠笛好きのつぶやき-北緯一度から-】シンガポール在住の篠笛愛好者のブログです。A Shinobue, Japanese bamboo Flute lover in Singapore
とあるイベント会場のkult kafé
丘の上にございます
さて、何のイベントでスピーチ&演奏したのでしょう?






We Love Jazz SG 主催
「We Love Jazz SG celebrates International Jazz Day 2019」
にお邪魔しましたー
Jazzはもちろんやってません(笑)

出演者一覧のポスター
素敵なJazzパフォーマーの方たちがたくさん出演されていました
洋楽はやりませんが、洋楽を聴くのは好きです




ここからはちょっとだけ真面目なことを書きます。




「日本の伝統楽器です」って言っちゃうのは簡単。でも・・・


今回一つ自分を褒めてあげたいのは、篠笛を、「伝統」"tradition" / "traditional" という言葉を一言も用いずに説明できたことです。

「篠笛は日本の伝統楽器です」は強い印象を与える文句です。
海外でこれを言うと間違いなく注意を引けます。
と、同時にもうこれだけ言っちゃえばすべて説明した気になれてしまうという、落とし穴のような側面もある文句です。

事実、篠笛が日本の伝統楽器であるのは間違いありませんが、私は篠笛を吹いている限りは、篠笛のこと(歴史・特徴・音の鳴り方・音律・種類・吹かれている分野 等々)をきちんと説明できる人でありたいと常日頃から思っているので、安易に「伝統」という言葉に頼らないで篠笛のことを伝えるよう心がけています。

誤解のないように書いておきますが、私は別に「篠笛は日本の伝統楽器です」と言うことを批判しているわけではありません。「伝統」という言葉を使わなくても、篠笛を語れることはたくさんある、ということを申し上げたいだけです。

今回はオーディエンスの皆さんが積極的、好意的な姿勢でお話を聞いてくださったこともあり、篠笛の中身の説明だけで、結果として篠笛が長い歴史を持つ日本の伝統楽器であることを伝えることが出来ました。それは私にとっては大きな自信につながる出来事でありました。



【ある篠笛好きのつぶやき-北緯一度から-】シンガポール在住の篠笛愛好者のブログです。A Shinobue, Japanese bamboo Flute lover in Singapore
脈絡なく猫ちゃんの写真を貼ってみる(笑)
同じHDB(シンガポールの団地)に住む仲良しの猫ちゃんです

ドレミは日本の伝統?


篠笛が日本の伝統楽器であるのは間違いないと書いておいて矛盾してしまうのですが、実は最近「本当にそうなのか?」と感じ始めている自分がいます。

現在、ドレミ笛で演奏する奏者・愛好家さん達が9割以上を占めているそうです。
このような篠笛業界の現状を考えますと、篠笛を「日本の伝統楽器」と言って良いのか疑問を抱いてしまいます。

ドレミ笛奏者・愛好家の方たちは、西洋12平均律で調律された篠笛で洋楽系音楽(洋楽・J-POP・アニソン・童謡唱歌等)を演奏されています。私は、これらの行いの何れの点に於いても「日本の伝統」的要素が存在しているとは思えないのです。



「何を言うか、ドレミは既に日本の伝統である」と日本国民の8割以上からご指摘いただいたら「知りませんでした、すんません」といよいよ考えを改めるかも知れません。

あるいは、「いや、実はドレミは1000年前から日本にあって、ここに当時のドレミ笛が・・・」と、歴史的資料をご提示の上で衝撃的事実の解説をしてくださる方が万一いらしたら即日考えを改めます(笑)


アホなことばっかり言ってますが、まあよっっっっぽどのことがない限り、ドレミが日本の伝統であるとは到底思えないわけです。

でも現在、篠笛の主流はドレミ笛です。
だから篠笛を「日本の伝統楽器」と言うことに「うっ」と抵抗感を抱いてしまうのです。


「伝統」は責任が付きまとう重い言葉


このように、篠笛をとりまく現状とそれに対して私の中で解消されないモヤモヤがあるため、篠笛を説明する際、「伝統」という言葉を使うことにさらにブレーキがかかっています。

考えすぎなのでしょうか?

考えもなく、むやみやたらに使ってよい言葉とは思い難いのですが...
使う限りは責任が付きまとう重い言葉だと私は捉えています。


最後に、私のお気に入りの辞書『新明解国語辞典 第七版』(三省堂)より以下を抜粋してこの記事を終わります。

でんとう【伝統】
前代までの当事者がしてきた事を後継者が自覚と誇りとをもって受け継ぐところのもの。


以上、「5分間だけドレミを忘れましょう」でした。

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