突然ですが、
お寿司屋さんへ行ったとします。(日本国内とお考えください)
結構、繁盛しているようで客席はほぼ満席。
予約していたカウンター席に座りました。
目の前では日本人の板前さんがお寿司を握っています。
「おまかせコース」を頼みました。
板前さんが最初のお寿司を目の前に置きました。
「ん?!」
あれ、これはもしかして、シンガポールのスーパーでよく売られている
カリフォルニアロール?!
前菜として敢えてこういう変わり種を出す店なのかな・・・?
ふたつめ
「えぇ?!」
来たよ、アボカドや。アボカド好きやけど、違うやん。
次
はいはいはいはい、これな。うん、外国の人こういうの好きやわ。
入る店間違えてしまった。これは私が悪いわ。うん。
ふと振り返って店内を見渡すと、店内にいるのは全て日本人。
みんなカリフォルニアロールをありがたそうに食べている。
「やっぱ日本の寿司は美味いね」
「和の心を感じるね」
口々にカリフォルニアロールに賛辞を送るお客たち。
誇らしげな板前さん。
目眩がしそうになって、お会計を済ませて店を出る。
「お寿司って何だっけ・・・」
虚ろな目でとぼとぼと歩きながら夜の闇に消えていく・・・
終
-世にも奇妙な物語春の特別編-
この物語はフィクションです。
当たり前です(笑)
こんなことは日本では起きませんよね。
日本に住まわれている日本人で、お寿司と聞いて、瞬間的にカリフォルニアロールを思い浮かべる方はおそらくいらっしゃらないでしょう。
カリフォルニアロールに「和の心」を感じる方も珍しいのではないでしょうか。
断っておきますが、カリフォルニアロールのことを否定するつもりは全くありません。
カリフォルニアロールは魚を生で食べる習慣がない、また酢飯に馴染みがない外国人に寿司を知ってもらう最初のきっかけとしては大変 工夫された食べ物だと思います。
私も猛烈にごはんものが食べたいけれど自炊する時間がない時にシンガポールのスーパーで買って食べます。
ただ、カリフォルニアロールが日本の食文化を代表する食べ物かと問われたら「違います」ということは申し上げたいです。
味も、素材も、作り方も、提供のされ方も、食べる時の作法も、何もかも寿司とは別物です。海外でよく遭遇する、「なんちゃって和食」に入ります。それが悪いとは申しません。
話を元に戻しますね。
今回、世にも奇妙な物語春の特別編をお届けしましたが、
これを読まれて
「んなこたぁ起きないよ」(タモリ)
って普通に思われましたよね。
そうなんですよ。多分、今後も起きないと思います。
でも、これ篠笛の世界では既に起きてしまってるって言ったらどう思われます?
篠笛の演奏会に行ったとします。
チラシに「日本の心」とかなんとか書いてあります。
会場はお客さんでいっぱい。
期待しますよね。
一曲目、めっちゃ洋楽。
二曲目、めっちゃポップス。
三曲目、日本の曲を演奏しますって言って、童謡唱歌
吹いてる笛はドレミ笛
周りのお客さんの反応「和の心を感じる」
「篠笛って何だっけ・・・」
ノンフィクションです。
フィクションであって欲しいけど、これリアルで起きてることです。
洋食文化が日本に入ってきたとは言え、日本の食文化は割と守られているというか、日本食と外国の食文化の棲み分けがうまく出来ているように思えます。
海外に出て初めて、自分も含めて日本人って和食文化へのプライド、こだわりを強く持っているんだなと感じました。
前述の「なんちゃって和食」に遭遇した時の日本人の反応は大変シビアです。
「こんなの日本食じゃない」と味付けや素材だけでなく、器や盛り付け方、店員の食事の提供の仕方、店の雰囲気、佇まいなど総合して、「日本」的かそうでないかの評価を下します。
もちろん、値段に見合った味・サービスが提供されますから、料金設定が低いお店でこれをやったらただのイタい客ですけど笑
そんな日本人ですが、どういう訳かこと音楽文化に関してはプライドもこだわりも希薄であるように感じます。
「なんちゃって和食」を食べてこれは違うと判断できる日本人が、「なんちゃって和楽」を聴いてこれは違うとはならない。
食文化は守れているのに音楽文化は守れていない。
なんでなんでしょう。
最近、会う人会う人にこんな話をしています。
ああ、大阪帰ってお寿司食べたいなあ!