2019/06/11

京都 篠笛修行メモ5 - 風にやられた -


前回の、京都 篠笛修行メモ4 - ノーミス狙いが目標じゃない - からの続きです。

読んでない方はお先にこちらを・・・


京都 篠笛修行メモ4 - ノーミス狙いが目標じゃない -

3日目(5/19)

⑤風にやられた



予定通り、13時半より本堂にて般若心経の読経と御焼香の後、奉納演奏が行われました。

「桜」と「篠楽」― 玲月流門下生一同
「カミあそび」   ― 森田先生

「奉納演奏」というものに初めて参加させていただいたので、勝手が分からず他の門下生の皆さん達の見よう見まねでなんとか凌ぎました。
般若心経、小さい頃に憶えててよかったぁー(汗)

こういう厳かな場は緊張しますね。


*奉納演奏に向かうために本堂に向かう門下生たち
私、踵上げて歩いてるんですけど、これ絶対 間違ってると思うんです・・・
もう、めっちゃ無作法・・・すみません・・・

*初の奉納演奏


引き続き、日本庭園を望む「大輪の間」に移動して、玲月流門下生による発表会。


大輪の間より
右側にチラっと見えている赤い毛氈を敷いている
ところが私達の舞台です

会場を覗くと、お客様がお部屋いっぱいに座っていらっしゃって驚きました。(過去最高のお客様の数だったそうです)


篠笛だけの演奏会でこんなにたくさんの人がお見えになるなんて、ちょっとシンガポールでは考えられないです(そもそも篠笛に特化した演奏会の実施そのものが当地ではあり得ないのですが)。
日本はお客様に恵まれてますねぇ。ありがたいことです。


・・・


発表会では16名の門下生が一曲ずつ一人で演奏し、私は16番目で「さくら」を演奏しました。

*「さくら」演奏中

めちゃくちゃ緊張してしまいました。


「0の音」は・・・半分アウト・半分セーフみたいな結果となりました。


一番最初に出てきた「0の音」だけ出だし少し鳴らなかったのですが、吹きながら持ち直して捻り出した感じです・・・もう、やっちゃったものは仕方なし。



それよりも、何よりも、


にやられました。


お庭から吹いてくる冷たく乾燥した風に唇と口の中の水分が一瞬で奪われてしまいました。息継ぎの度に冷たい風が口から入って来て、乾燥した唇がうまく歌口の上に乗らず、「さくら」を演奏中に音が崩れそうになる局面が何度かありました。

緊張で口が乾いてしまうことはこれまでも何度も経験していますが、今回のように風という外的要因によって自分のコンディションに大きな変化が起きたことは初めてでした。


それでも大きな事故にはならず、なんとか一曲を吹き終えて舞台袖へ退場。


お水を飲み干しながら、


(そうか、日本で笛を吹くってこういうことなのか・・・)


移り変わる四季・自然の中で笛を吹くことの厳しさを思い知らされたのでした。



プログラム上では発表会はここで終了だったのですが、その後、サプライズで(?)香織先生と3曲演奏させていただきました。


「馬鹿囃子」という伊勢大神楽の獅子舞の曲
香織先生が太鼓で入ってくださいました。

*「馬鹿囃子」

次は、
香織先生の「月」独奏から、「カミあそび」
無理を言って、太鼓を叩かせていただきました。

*「カミあそび」

最後は私が大好きな「秋の音」という曲を香織先生と二重奏で。
もうこの時にはだいぶ緊張も解れていました。
香織先生がいい感じで入ってくださるので、それが心地よくて心地よくて、うっとりしながら吹いていました。

*「秋の音」二重奏

なんとか無事終了。
時間にしてみればほんの15分くらいのことでしたが、色んなことが巻き起こった発表会でした。

*香織先生がいてくださったのが本当に心強かったです

この間もずっと風とは戦っていました。


最後の「秋の音」を吹いている時は、唇ガッサガサ・喉カラッカラの状態で、
一番バシっと決めたかった曲でしたが、本調子では吹くことは出来ませんでした。
(良い音は出ていたそうなのですが、自分的には不完全燃焼)


すべてを終えた後、まず「自然に敗北した」という気持ちになりました。
そして、自分が篠笛を吹く身体を全く作れていないことを痛感したのでした。


これは、年中通して気候・気温の変化があまりないシンガポールに留まっていたら絶対に気づかなかったことだと思います。


発表会プログラムを終え、続いては森田先生による演奏会です!



京都 篠笛修行メモ6 につづく。 

京都 篠笛修行メモ6 - 篠笛を吹く理想的な環境とは -




* 撮影:ミヤシタデザイン事務所様

2019/06/09

京都 篠笛修行メモ4 - ノーミス狙いが目標じゃない -


前回の、京都 篠笛修行メモ3 - 演奏前日にとんでもないことが - からの続きです。

読んでない方はお先にこちらを・・・


京都 篠笛修行メモ3 - 演奏前日にとんでもないことが -


3日目(5/19)

④清らかな風と直前のアドバイス


さあ、演奏当日です。


早朝に目が覚め、朝食・身支度を済ませた後、ホテルの自室で鏡に向かって笛の構え方などの確認。

音は出せませんので空打ちで、「0の音」の運指を何度も練習しましたが、右手薬指と小指を置く位置が未だ定まらず。さあ、本番どうなるか・・・


演奏場所の御寺泉涌寺(みてらせんにゅうじ)別院 雲龍院には初めて行くので、早めにホテルを出発しました。


JR奈良線の東福寺駅を降りてGoogle Mapさんの案内の通り歩くこと20分。


雲龍院へ向かう道
私の後ろには登山グループの方たちが
いらっしゃいました


・・・あれ?雲龍院さんって山の上にあるんですね(汗)
いやぁ、どうりで坂道が多いはずです。知らなかったのでサンダル履いて来てしまいました(←アホ)ひえーーーっ


泉涌寺境内に宮内庁管轄の宮墓地がありました。
賀陽宮(かやのみや)墓地・久邇宮(くにのみや)墓地

とても静かな場所です
賀陽宮(かやのみや)墓地・久邇宮(くにのみや)墓地

うんしょ、うんしょと汗をかきながら歩いてようやく雲龍院さんへ到着。

山登りはちょっと予想外でしたが、山上の心地よく清らかな風に迎えられ、疲れが一気に吹き飛びました。


・・・


さて、集合時間になりますと森田先生から門下生一同に本日の奉納演奏・発表会の流れの説明に加え、次のようなお話がありました。


「雲龍院は篠笛を吹くのにとても理想的な場所です。なかなかこういう場所で笛を吹ける機会はありません。お庭から返ってくる自分の笛の音色を楽しみながら吹いてみてください。間違わないように吹こうとか、ノーミスを狙うことがここで吹く目標ではないということを覚えておいてください。」(一言一句は一致しませんが、確かこのような内容でした)


このお話は、前日から「0の音」問題で少し悶々としていた私に色々と気づかせてくれる金言となりました。


(確かに日本で、しかもこんな絶好の場所で笛を吹くという又とない機会に、「0の音」一点に囚われて周りが見えなくなってしまうのはもったいなさ過ぎる。
ミスはおそらく50%の確率で起きるからその後どう立て直すかが大事。
もうちょっと視野を広くして落ち着いていこう。あと、お客様のことを忘れちゃだめ。)

お話の後、こんな感じのことを考えていたと記憶します。


森田先生が一番伝えたかった、「お庭からの反響音」については、正直この時点ではあまり意識というか仰っている意味の理解すらしていなかったのですが、アドバイスの後半の部分が自分には響いて本番直前のメンタルを立て直すことが出来ました。


「お庭からの反響音」について考え出したのは、自分の本番が終わった後になります・・・



その後、衣装に着替え、お客様をお迎えするために会場のセッティングなどの準備をしていよいよ13時半より奉納演奏・発表会の始まりです。


京都 篠笛修行メモ5へ続く
京都 篠笛修行メモ5 - 風にやられた -


大輪の間から見たお庭


大輪の間の「瞑想石」

2019/06/05

京都 篠笛修行メモ3 - 演奏前日にとんでもないことが -

前回の、京都 篠笛修行メモ2 - いよいよ京都でお稽古 - からの続きです。

読んでない方はお先にこちらを・・・


京都 篠笛修行メモ2 - いよいよ京都でお稽古 -


2日目(5/18)
③京都でお稽古続行、しかしとんでもないことが発覚・・・



初日に続いて、今日も玲月流・篠笛文化研究社にて発表会に向けて香織先生とお稽古です。


前日に先生方からご指摘を受けた箇所を意識して修正しようとするものの、たった一日で出来るはずもなく、相変わらず笛の持ち方の指導を受けました。


息の向き、お囃子系の曲を吹くときの留意点などは多少調整できたところもありました。
ホッ。


しかし、ここに来てとんでもない問題が発覚したのです。


0(零)の音です。


私は、0の音を出すときに少しカリぎみ(笛を前に倒して)にして吹く癖があります。


これは、シンガポールで一番最初に篠笛を習った際(私は森田先生に出会う前は違う方から篠笛の指導を受けておりました)に教えられた方法で、0の音を出すときはカリ吹き、というのが定着してしまっております。


0の音は第一孔と第二孔をきちんと塞いでいないと絶対に出ないしくじりやすい音です。
0の音をカリぎみで吹くと確かに音の出る成功率は上がりますが、七メリの音よりずいぶん強く音が鳴るので、曲吹きをした時に、他の音とのバランスが良くなくて、これでいいのかなぁと疑問に思うところはありました。


そこを今回初めて香織先生に指摘されました。


まず、カッたりしなくても0の音は正しい指の置き方をしていればちゃんと出る。
(うわぁ、ズルしてごめんなさい!)


カリ吹きで吹くと0の音だけ突出して強くて重い音になってしまう。
(はい、そこ気になってたんです)


そして、笛を前に倒す動作(カル)が入る分、音を出すのが遅れてしまう。
(確かに音を出すタイミングが遅れやすいです)


私の0の音はどうしても出す前から「次0の音が来るぞ」と意識し過ぎて指に力が入ってしまっているのですが、香織先生のお手本を見ますと、全然0の音を吹くときに余分な力が入っていません。指孔を塞ぐというより、指孔の上に指を正しく乗せていると言った方が適切な表現かも知れません。
全然自分の指の動き、音と違っていました。


その後、ご指導を受けて何回も0の音を正しい方法で出す練習をしてみましたが1/2の確率で失敗してしまします。やはり、前日から指摘を受けているように、正しい指の置き方が出来るような笛の構え方が出来ていないのが原因です。


明日の発表会では「さくら」の他、香織先生と3曲演奏させていただくことになっているのでそればっかりやってる訳にもいかず、他の曲の練習へ。


明日、「さくら」を吹くことが決まっているのに・・・0の音がとても大事な曲なのにどうしよう・・・全部リセットや・・・
練習しながら内心はパニック状態でした。



お稽古・練習を終えた後、今出川駅前のジャンカラに入って昨日と今日のお稽古でアドバイスを受けたところを一旦頭の中で整理しながら1時間だけ自主練習しました。


0の音は意識すればする程、指がガッチガチになって音が出なくなっていました。


これ、明日失敗しそう・・・
でも失敗を避けるために以前の吹き方に戻すのは絶対にしないでおこう。


それだけはっきり決めて京都駅に戻りました。



帰り道、京都駅周辺で


夜は、京都駅八条口側にある「いち藤」で
おばんざい御膳
一人用のカウンターがあるのがうれしい

ホテルに戻ってからは、明日の準備をして早めにベッドに入りました。

付け焼き刃で調整して明日の演奏に臨んでも仕方がないので、もうやれることはないのですが、それでも緊張と不安でなかなか寝付けませんでした。


明日はいよいよ奉納演奏・発表会です。

京都 篠笛修行メモ4へ続く・・・




【おまけ】

午後に先生のところへ行く前に色々と「THE 京都」って感じの場所へ行ってまいりましたので写真だけ貼り付けておきます。